ネーミングライツパートナーがつなぐ地域の絆。ホークスの事例から学ぶ活用術

「みずほ PayPayドーム福岡」や「エスコンフィールド HOKKAIDO」など、いまや日本のスポーツ・エンターテインメントシーンにおいて「ネーミングライツ(命名権)」は切っても切れない存在となりました。しかし、単に施設に企業名を冠するだけの「単なる看板広告」だと思っていませんか?
本稿では、福岡ソフトバンクホークスの事例を軸に、ネーミングライツパートナーとは何かを解説していきます。
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目次[非表示]
ネーミングライツパートナーとは何か?
ネーミングライツの定義
ネーミングライツ(Naming Rights)とは、施設やイベント、チームなどの名称を付与・決定する権利のことで、日本語では一般的に「命名権」と呼ばれます。
この権利を保有する企業は「ネーミングライツパートナー」と称されます。
一般的には、自治体や企業が所有するスタジアム、アリーナ、文化ホールなどの公共施設に対し、スポンサー企業が一定期間の契約料を支払って命名権を取得する形態を指します。
所有者側にとっては「施設の維持管理や運営資金の確保」、企業側にとっては「ブランド認知度の向上や社会貢献(CSR)」という、双方にメリットがある仕組みです。
【事例紹介】
- SAWARAPIA(サワラピア)福岡県立ももち文化センターのネーミングライツを、地元企業の株式会社サワライズが取得。2023年より新たな愛称として運用されています。
- ピザクック通りJR中間駅と筑豊電鉄通谷駅を結ぶ市道(約1.6km)のネーミングライツを、ピザチェーンを展開する株式会社イワタダイナースが取得。自治体の道路に愛称が付いた珍しい事例です。
【日本における歴史と変遷】
2003年、東京スタジアムが「味の素スタジアム」となったことが、日本の公共施設におけるネーミングライツ導入の先駆けとなりました。深刻な財政難に悩む地方自治体にとって、施設の維持管理費を確保する画期的な手段として大きな注目を集めました。
ネーミングライツパートナー(企業側)のメリット
ネーミングライツ(命名権)の取得は、単に施設に名前を付けるだけでなく、企業にとって多角的なメリットをもたらす戦略的なマーケティング手法です。
一般的に得られる主なメリットは、大きく分けて以下の4つに集約されます。
圧倒的な露出による「認知度の向上」
広告費以上の露出効果が、日常のあらゆる場面で期待できます。
- メディア露出:ニュースやSNS、スポーツ中継などで施設名が繰り返し発信されます。
- インフラへの反映:地図、カーナビ、案内板等に企業名が記載され、生活者の視界に定着します。
地域貢献・社会貢献による「イメージアップ」
公共施設の維持を支援する姿勢が、企業への信頼と親近感を醸成します。
- 地域共生:「地元の施設を支える企業」として、住民からの好感度が高まります。
- ESG/CSR活動:行政負担の軽減に寄与する姿勢を、対外的にアピールできます。
施設を活用した「独占的・優先的な権利」
名称権以外の付加価値を、ビジネスに直接活用できます。
- プロモーション展開:施設内での看板掲出や、自社製品のサンプリング・展示が可能です。
- 優待利用:VIPルームの活用やチケットの優先確保など、顧客招待や接待に活用できます。
インナーブランディング(社員のモチベーション向上)
自社名の冠された有名施設の存在は、内部組織にも好影響を与えます。
- 帰属意識と誇り:社員や家族のエンゲージメントが高まり、採用活動の強化にもつながります。
施設所有者(球団・自治体側)のメリット
自治体・外郭団体が所有者の場合は「公費の節約と住民サービス」が中心となり、球団が所有者の場合は「ビジネスの最大化とファン還元」が中心となります。
それぞれのメリットは以下の点です。
自治体・外郭団体が「施設所有者」の場合
ネーミングライツ料を運営に充てることで、財政の健全化を図ります。
- 新たな財源の確保
税金以外で収入を得られるため、財政が逼迫する中で貴重な「自主財源」となります。 - 維持管理費の削減
契約金を修繕費や光熱費に充てることで、本来投入するはずだった公費(税金)を、福祉や教育など他の重要施策へ振り分けられます。 - 施設価値の維持・向上
命名権企業と協力して設備更新(トイレの洋式化、Wi-Fi整備など)を行うことで、自治体予算だけでは難しかった利便性向上が実現します。 - シティプロモーション
施設名がメディアで連呼されることで、自治体名の認知度が上がり、都市ブランドの向上につながります。
球団が「施設所有者」の場合
自社球場を持つ、または自治体から運営権を完全に委託されている場合、「事業成長のためのマーケティング戦略」という側面が強くなります。
- 強化費・運営費への直接投資
獲得した命名権料を、選手の補強、育成環境の整備、あるいは最新のスコアボード導入などの「勝つための投資」に直接回せます。 - パートナーシップの深化
命名権を購入した企業と、単なる「看板広告」以上の深いビジネス連携(冠試合の開催、共同商品開発、福利厚生での活用など)が可能になります。 - ファン体験(CX)の最大化
企業の資金を活用し、エンターテインメント性を高める演出設備や、魅力的な飲食エリアの構築など、ボールパークとしての魅力を高めることができます。 - 資産価値の向上
自社でコントロールできる範囲が広いため、企業のニーズに合わせた柔軟な露出や改修が可能となり、命名権としての販売価値(単価)を高めやすくなります。
ネーミングライツを浸透させるための3つのポイント
これからネーミングライツを検討する企業や施設にとって、ポイントは以下の3点に集約されます。
- ストーリーの共有単なる権利取得という事実ではなく、「なぜこの施設を支えるのか」という背景やビジョンを言語化して伝えます。企業理念と施設の歴史を重ね合わせ、地域貢献への想いを共有することで、利用者や住民からの反感や比較を「共感」へと変え、味方を増やします。
- 体験との紐付け施設を単なる「名前の露出の場」ではなく、自社サービスを享受できる「ブランド体験の拠点」と再定義します。最新技術の導入や体験型イベントを通じて、施設の利便性と自社ブランドをポジティブに結びつけ、顧客の記憶に深く定着させます。
- 継続的アップデート命名権取得をゴールとせず、利用者と共に歩む**「共創型パートナーシップ」**へと進化させます。フィードバックの反映やコンテンツの更新を継続し、「施設をより良くしよう」とする姿勢を示すことで、長期的な信頼とブランドロイヤリティを築きます。
ホークスのネーミングライツ事例紹介
ここからは、ホークス関連のネーミングライツの事例を紹介していきます。
みずほPayPayドーム福岡
福岡ソフトバンクホークスの本拠地における、ネーミングライツの代表例の1つです。
2024年4月より、株式会社みずほフィナンシャルグループとPayPay株式会社の2社が連名で取得しています。
年間約400万人が訪れるドームの名称にブランド名を冠することで、圧倒的な露出量を確保します。特にデジタル決済の「PayPay」と、伝統的な金融の「みずほ」が並ぶことで、幅広い層へのリーチを目的としています。
また、福岡・九州の象徴的な施設を支援することで、地域社会との結びつきを強めるとともに、ホークスファンという熱量の高いターゲット層に対してポジティブな企業イメージを定着させる目的も持っています。

タマホーム スタジアム筑後
福岡県筑後市にあるファーム施設に導入されたネーミングライツ事例です。
注文住宅販売大手のタマホーム株式会社が命名権を取得しています。
地域活性化を目指すホークスの「ボールパーク構想」に賛同し、地元のシンボルとなる施設を支援することで、地域社会への恩返しとイメージアップを図っています。

関家具グループシート
タマホーム スタジアム筑後には、福岡県大川市に本社を置く家具の総合商社「関家具」がネーミングライツを取得した「関家具グループシート」という、ボックス型テーブル席があります。
地元球団であるソフトバンクホークスの若手選手を育成する「筑後の拠点」を支援することで、地域経済の活性化やコミュニティへの貢献を図ることや、野球ファンが集まるスタジアムに社名を冠したシートを作ることで、ブランド認知の拡大を目的にしています。

まとめ
この記事では、ネーミングライツパートナーについて以下の内容を解説しました。
- ネーミングライツパートナーとは何か?
- ネーミングライツパートナー(企業側)のメリット
- 施設所有者(球団・自治体側)のメリット
- ネーミングライツを浸透させるための3つのポイント
- ホークスのネーミングライツ事例紹介
「みずほ PayPayドーム福岡」や「タマホーム スタジアム筑後」といった事例が示す通り、ネーミングライツは今やビジネス、テクノロジー、エンターテインメントを融合させるプラットフォームとなりました。
今後、デジタル技術の進化に伴い、その価値は物理的な場所を越え、仮想空間やパーソナライズされた顧客体験へとさらに広がっていくでしょう。この「名前」の裏側にある壮大なビジネスデザインに注目することで、スポーツビジネスの未来はより深く、興味深いものへと進化していきます。
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